top of page

 保育所保育指針

 新しい「保育所保育指針」の特徴

2018年から適用される「保育所保育指針」が公表されました。これまでの「保育指針」とは大きく異なるところがあります。その特徴を見ていきましょう。

1)子どもは保育の権利主体から保育される対象に

 子どもは生まれながらにして権利の主体であり、保育を受ける権利は憲法の国民主権と各種人権条項によって守られています。さらに前文と9条の平和主義によって、子どもの権利が確保されていることは、シリアやイラクの子どもたちの置かれた状況を見るまでもなく明らかです。

 今回の保育指針改定は、権利主体としての子どもを保育を受ける対象としてしか見ていない内容に大きく転換するものとなりました。以下詳しく見ていきましょう。

2)「発達」記述の全面削除

 現行の「保育指針」では数ページにわたって子どもの「発達」について記述されていますが、今回の改定で全面削除されました。養護及び教育の内容部分で同じようなことを記述しているので、重複を避けたとも考えられますが、子どもの発達を歳児ごとに丁寧に記述することと、保育内容を事細かく記述することは全く別物です。

 子どもの発達に応じて行われる保育は、実際の子どもの実態に合わせて保育者がその都度内容を決めていくものですが、保育内容を細かく規定することは、子どもの実態にかかわらず、保育内容が規制されるということであり、保育者の自由な実践が損なわれると言えるでしょう。

3)小学校との接続 教育目標

 今回の改定が目指したものは、小学校との接続です。小1プログレムが声高に叫ばれ、小学校へのスムーズな接続が最優先課題とされました。しかも、過重となっているカリキュラム等の小学校の現状は変えずに、就学前の幼稚園、保育園の内容をかさ上げすることで、小学校との段差を少なくしようとしています。小学校就学までに育てる力として、様々な力を挙げていますが、そのどれもが、小学校卒業までに身についている子どもがどれだけいるだろうかと思うような内容ばかりです。

 指導要録の様式が全国共通になることも大きな変化です。内容に対しても国の規制を強化する露払いとなるでしょう。

4)家族主義・国家主義

 教育目標に家族を大事にする態度を育むことが盛り込まれました。家族を大事にすること自体は尊重されることですが、自助をベースにボランティア任せにし、家族に負担を求める福祉政策を推し進めようとしていることと合わせて考えると、問題とせざるを得ません。

 また、1945年以前の日本では、天皇を家長とする大家族主義の下、国民は天皇の子ども(赤子)とされ、命を懸けて家族=国家=天皇を守れと教育されました。そうした国家主義的な家族観への回帰が見て取れると言ったら言い過ぎでしょうか。

5)目標到達制度の導入(PDCAサイクル

 指導計画を立て、常に良いものとするために評価すると言っています。評価のやり方は、商品の品質管理の中で生まれたPDCAサイクルです。教育現場ではすでに導入されている考え方ですが、本来は指導方法や指導計画が適切であったかどうかを評価すべきなのに、目標と結果である子どもの表れが評価の対象となりがちです。教育目標は数値的に評価することが難しく、数年後にならなければ評価できないことも多々あります。しかし、短期間で評価するために、評価しやすい目標を立てたり、評価しやすい計画にしたりすることが、行われるようになります。これによって、保育内容の変質が起こる恐れがあります。十分な注意が必要です。

6)職位職責による研修体制・職員の分断

 職員の資質向上に向けて職員研修の充実が盛り込まれました。問題は職員の職位、職責に応じた研修を科すという点です。リーダーや主任クラスはより高度の内容を学ばせるが、平の職員はそこそこの研修でよいというものであり、子どもの前に立てば、同じ保育者として平等であるという、保育・教育の本質から離れたものです。

 時を同じくして導入されようとしている保育士職員処遇改善加算Ⅱでは、職員の職位・職責に応じて研修をするとともに手当をつけるとされました。共同・協力して実施される保育現場に、差別を持ち込み、高額な手当てによって分断を図るものです。子どもに対する責任も、職位によって変わるということであり、子どもの安全・安心をも壊すことになります。

 また、資質向上に欠かせない研修が、資格を取るための研修(あえて言えばお金をもらうための研修)に変質する恐れがあります。


静岡の保育園

4万円を支給するというが?

 処遇改善加算Ⅱについて



 国は保育士等の職員処遇改善について、加算Ⅱで、副主任・専門リーダーの職に対して一人4万円、分野別リーダーの職に対して一人5千円を支給するとした。誰もが、5千円または4万円給料が上がると思ったら、全く違うようだ。

 まず、法人はこれまでの園長・主任・保育士という3段階の職位の他に、副主任・専門リーダー・分野別リーダーという職位を新たに設けなければならない。それに合わせて給与規定や就業規則を改定する必要がある。当然、職員との協議や理事会の開催が必要となる。

 対象となる職員は、それぞれ7年以上、3年以上の経験を有する者であるが、全員が対象になるわけではなく、園長・主任を除いて国が定めた基準数に応じて支給対象者数が決められる。4万円の対象者のうち半数は実際に4万円支給される必要がある。5千円対象者は、そのまま5千円が支給される。

 4万円の残り半数分は他の職員に分配してもよいとされるが、分配に法人内の基準が必要なことは当然であろう。

 問題は、4万円の手当てをもらう職員のほうが園長より高い給与となってしまう場合があることだ。特に園長の手当てが2~3万円で、年齢が比較的若いと逆転現象が生じかねない。その場合には、法人が負担して園長の手当てを増額する必要があるだろう。これは新たな負担となり、法人の経営を圧迫する要因となる。

​ より大きな問題は、同じようなキャリアを持つ職員間に差別を持ち込むことである。誰に4万円を支給するのか。頭の痛いことである。支給される者と支給されない者との間で、軋轢も生まれるだろうし、園長からの評価だと受け取る向きもあるだろう。評価を気にする職員が出てくることは必然だろうし、評価されなかったと思う職員の士気は下がるだろう。職員が共同・協力して行う保育に対して、手当で差をつける方法は、決して良い結果を生まないだろう。

In The

News:

公立こども園の民間移管

12月末に静岡市は、かねてより計画していた公立こども園の民間移管にいよいよ踏み切りました。第一陣は新富町こども園です。16年度末には保護者説明会をしており、移管先の法人を募集しています。

​締め切りは2月28日です。公募から締め切りまで2ヶ月しかなく、どのくらいの法人が応募するのか予想がつきません。

研修はどうなるのか

長浜のp経営セミナーでは全国の様子が交流されました。横浜市や京都市では、早くも研修が始まっています。しかし、とりあえず開始したといった感じで、体系的にしっかりしたものではないようです。

別の市では、全国どこの研修会でもハンコをもらえば研修を受講したものと認定するとの説明があったそうです。

誰を出すのか、経費の負担はどうするのか、加算を配布する場合にも受講していないとだめなのか、などなど、これから詰めなければならないことが山積しています。

処遇改善Ⅰと処遇改善Ⅱは重複する?

 

静岡市は、

加算Ⅱで4万円を支給される職員についても、加算Ⅰの処遇改善の対象から外してはならないと指摘しました。

問い合わせに対して、「制度が違うので、両方必要であるが、加算Ⅰの配分方法は法人に任されているので、1円以上の改善があればよいということか」という意見を否定しませんでした。

bottom of page